KYBの免震・制振装置データ改ざん!どのようにして起きたのか

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2018.11.21

2018年10月、免震・制振装置の検査データの改ざんというニュースが駆け巡りました。
建築関連の不祥事が明るみになる度に、耐震性についてチェック体制の見直しや建物の安全性について議論になります。
今回の事件の説明と話題になっている免震・制振装置の果たす役割についても説明します。

KYBとは?

油圧機器製造の大手企業です。歴史も古く、始まりは大正時代です。海外にも拠点を持つ規模であったため、不祥事のニュースの衝撃は大きなものとなりました。
油圧機器と建築分野はつながりがないように思えますが、オイルダンパーは振動を吸収する機械です。
そのため、ビルに用いられる地震の揺れを減らす免震装置や制振装置にもこの仕組みが使われているのです。

建築分野だけでなく、油圧機器の技術は自動車の部品にも使われます。
事実、KYB株式会社は、東証1部上場で主要株主はトヨタ自動車です。
自動車部品業界の中でも存在は大きく、 今回の発表は建築分野の免震装置のデータ改ざんのみ ですが、他の業界にも混乱が広がるのではという懸念もあります。

免震・制振装置のデータ改ざん事件

KYB株式会社は子会社であるカヤバシステムマシナリー株式会社が製造・販売した免震・制振装置のオイルダンパーにおいて、大臣認定の性能評価基準や顧客要望を満たさないものがあったことを公表しました。

2007年1月以前はKYB株式会社岐阜南工場が製造を行い、それ以降はカヤバシステムマシナリー株式会社に事業が移っていますが、 KYB時代から改ざんがあった可能性 を公表しました。
事業が移行された時に、改ざんの手法も引き継がれていたようです。
改ざんの可能性が高いのは、2003年1月〜2018年9月ですが、2000年3月に岐阜南工場で製造が始まったため、改ざんの可能性が否定できないことにより、2000年3月以降のものも不明として調査中、数に含まれています。

物件数でみると、免震装置で903物件、制振装置で83物件が大臣認定基準不適合や顧客の要望を満たしていない又は不明のため調査中であることが発表されました。
生産当初から2018年9月までの総出荷数は、免震装置で1052物件、制振装置で358物件ですから、かなりの割合で疑わしい、調査が必要な建物があることが伺えます。
内訳としては、免震装置は住居で最も多く253物件、制振装置は事務所で最も多く28物件です。

新築マンションでは、耐震のマンションが多くを占めます。
免震や制振というのはプラスαの付加価値であり、免震装置は一般にタワーマンションや中層階の高価格帯のマンションに使われています。
「免震」が売りとして販売されますから、安全だと思って購入した消費者の信頼の失墜は免れません。

KYBは交換工事を行うこととしていますが、 早くとも完了できるのは2020年 
昨今の人手不足もありますから、これよりも長期化する可能性も十分にあります。
今後は、工事説明の住民向け説明会も開かれることが想定されますし、時間がかかることですから、混乱が生じると考えられます。

どのように改ざんされたか

本来の正しい手順としては、検査において規定の中に数値が収まっていないものについては、分解を行い再度組み立て、検査を基準内に収まるまで繰り返すものでした。
今回の問題となかった改ざんは、 不適合になったものに対して、分解をして再調整が必要な工程を省き、検査結果を書き換えて基準内にしていた というものです。

不適合品には、分解や組み立てと再検査など手間がかかるため、それを避けるため今回のように改ざんが常態化してしまったのです。
発表でも納期の問題で、改ざんを行ったという説明もされています。
基準値からの乖離の許容範囲は、次のようになっています。

検査結果がこの範囲でなければ、再調整が必要になります。
免震装置では、大臣認定基準で±15%、顧客要望は±10%以内
制振装置では、顧客要望は±10%以内(大臣認定制度がないため)
今回の不適合が疑われている物件の中でも、この数値からの乖離が最も大きかった物件の最大乖離値は42.3%とありました。この物件を含めた乖離が大きい7物件は第三者機関の構造計算により、震度6強から震度7に耐え得ることが証明されています。

しかし、この乖離している数字をみると、顧客にとっては、欠陥品を納入されたと思われても仕方ありません。
基準値から乖離が大きくなると、免震装置では、例えば+に乖離するほど、オイルダンパーの動きは硬く、建物への震動が伝わりやすくなります。−であれば、ダンパーの動きが柔らかくなることで、建物の揺れ幅が大きくなり、免震建物にある周囲の擁壁と接触する可能性があります。
制震装置でも、+に乖離するとダンパーが硬くなってしまい、室内の揺れが大きくなり、−に乖離するとオイルダンパーの動きは柔らかくなり、揺れが吸収できないため、建物の揺れは大きくなります。
+でも−でも地震に対して有効に機能しにくくなり、適切な範囲内になければ、機能を十分に発揮できないのです。
 他にも免震装置に大臣認定とは異なる材質(ピストン、パッキン、塗料)が使われていたことも公表 されました。

免震・制振装置とは

免震装置とは建物と地面の間に積層ゴムと言われる物を挟み、地面からの地震エネルギーを建物に伝わらないようにするものです。建物が地面から離されているのが特徴です。
積層ゴムの変形を防ぐために、今回問題となっている免震オイルダンパーが用いられることもあります。
免震オイルダンパーは建物と地面の間にあり、地震エネルギーが伝わるとダンパーは伸縮し、揺れを軽減します。

制振装置とは、建物の各階に、筋交いのような形で柱と梁をオイルダンパーで繋ぎます。
地震の他に風の揺れにも有効であると言われています。
建物に伝わる地震エネルギーはオイルダンパーが可動することで吸収され、大きな揺れを小さくすることが可能です。
制振では、地面に建物が接しているので、地震の揺れは建物には伝わりますが、制振装置があることで揺れを緩和することができる仕組みです。
制振の方が免震装置に比べると安価であることや、耐震補強のように後付けもできることから免震よりも導入はしやすいといえます。

免震と制振で設置場所には異なりますが、伸縮することで揺れを緩和するのが、今回問題になっているオイルダンパーの役割です。

立て続く不祥事

今回の不祥事は2015年に問題になった東洋ゴムの免震装置の偽装事件を上回る規模になっています。
過去にはマンションが傾き、杭データの改ざんが明るみになる事件もありましたが、このような事件が後を絶たないように思う人は多いでしょう。

建物の構造部分は、ほとんどが室内から見えない部分です。
建物が完成してしまうと、場合によっては、杭のように完全に見えなくなってしまう部分や、壁を壊さなければ見えない部分が多く、目視で発見することはほとんど不可能といえます。
しかもデータの改ざんともなると、たとえ目視できても発見できないかもしれません。
また、オイルダンパーもそうですが、建物に複数設置されるもののため、1本がダメだから、すぐに危ないかというとそこまでの緊急性もないとの結論がほとんどです。

KYBも内部告発で明るみに出ただけで、告発されなければ、公にならなかった可能性もあります。
極めて気づかれにくい部分のため、納期優先で手間を省くことが行われていました。
チェック体制があったとしても、組織として不正が常態化してしまうと、是正していくのは困難といえるのかもしれません。

【著者プロフィール】soraki

宅地建物取引士を取得し、ディベロッパーのマンション営業として企画、集客、顧客の住宅ローンの審査まで幅広く携わる。新築分譲マンションのモデルルームでの接客をしながら、審査の通りにくい顧客にも対応し、住宅ローンを提案。その後、マンション管理会社に転職し、フロント営業となる。修繕の提案や長期修繕計画の作成など、管理業務主任者として分譲マンションの管理組合運営に関わる。

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